AgroBox No.1(結晶化スクリーニング)
まずはタンパク質結晶を見出す
1. サンプル品質チェック
結晶化できるかどうかは、サンプルの純度、濃度、性質に大きく依存します。AgroBox No.1では、まず簡易的かつ重要なチェックとして、UV計測およびSDS-PAGE解析により、お客様にご提供していただいたタンパク質の純度および濃度の確認を行います。この段階でアミノ酸配列情報をご提供頂く必要はありません。純度または濃度が不十分であった場合、直ちにお客様にデータと共にご連絡いたします。本データは、結晶化スクリーニングおよびX線回折実験の結果の参考データとしても用います。
この段階で結晶化に適さない可能性があると判明した場合、結晶化段階に進むか、中止にするか、お客様が選択可能です。中止した場合は、AgroBox No.1の見積額の1/10の金額の請求となります。なお、単純な濃度不足の場合では、十分なサンプル量があれば、当社で濃縮作業(遠心式限外ろ過フィルター)を実施することも可能です(★無料:ただしサンプルロス時の保証はございません)。
2. 一次結晶化スクリーニング
タンパク質結晶化実験として、様々な条件の結晶化溶液と高濃度タンパク質溶液を混合させて、数日から数週間静置します。結晶化溶液は、レパートリー豊富にご用意した市販のスクリーニングキット(Table)の中から、基本Boxおよび追加Box A, B, Cを選択いただきます。基本的には、20℃でシッティングドロップ蒸気拡散法を用いた結晶化スクリーニングを行います(96×5=480条件)(※4℃または任意の温度をご希望の方は、別途ご相談ください)。結晶化プレートは、結晶化ロボット(SPT Labtech社製mosquito)を用いて作成します。480条件のスクリーニングを行うためには、5mg/ml以上の濃度のタンパク質溶液が125 μl必要になります(0.20μl分注)。
※本サービスは、脂質キュービックフェーズ(LCP)法を用いた膜タンパク質結晶化に対応しておりません
タンパク質結晶化用ナノリッター分注機mosquito(SPT Labtech社製)を用いた結晶化スクリーニング
一次結晶化で利用可能なスクリーニング溶液セット一覧
※任意のスクリーニングキットをご選択いただく事も可能です(別料金)。
スクリーニング溶液おすすめ組み合わせ
3. 結晶観察
結晶化プレート上の結晶の発生を確認するため、顕微鏡を用いて定期的に観察します。結晶発生は、早くて数日、遅いものでは1か月以上の時間が必要です。また結晶化プレート上には、タンパク質結晶だけではなく、結晶と見間違う沈殿や、沈殿剤などに含まれる塩の結晶が生じることも珍しくありません。当社では、定期的に結晶を写真撮影し、その判定を経験豊富な研究者が行っています。結 晶化プレートの観察期間は、最大2か月としております(創薬用の複合体結晶の作製などにおいて、結晶の発生に数か月以上かかるような条件は実用的ではないため)。
4. 結晶品質チェック (ループ測定/in situプレート測定)
結晶化スクリーニングにより結晶が得られた場合は、X線照射によって結晶の質(分解能、回折点の形状、モザイク性等)を確認します。結晶の品質チェックには、結晶をループですくって凍結させる通常の手法と、結晶が生成した結晶化プレートに直接X線を照射するin situプレート測定法があります。結晶の数やビームタイムの確保状況によって、ループ法とin situプレート法を使い分けて測定を行います。
ループ法の場合、ループを用いて結晶の回収を行った後、結晶を凍結し、SPring-8、KEK/PF、AichiSRの各放射光施設を用いて、クライオ条件下でのスナップショット(結晶を回転させずに1~2点のみ測定)により結晶の評価を行います。一般的にループ法の方が、データの質は良くなります。(AgroBox No.2~4をご購入の場合は、ループ法にて十分な回折点が得られた場合にフルデータ測定を行う場合があります。)
in situプレート法では、KEK/PF・BL17Aビームラインを用いて、結晶化プレートに直接X線を照射します。PF BL17Aは、高輝度[1.5 x 10^11 photons/s (0.98 Å)]かつ、微小なビームサイズ[0.040 mm (H) x 0.016 mm (V)]でX線を照射できるマイクロフォーカスビームラインであるため、in situプレート測定に適しています。
以上の測定から、当社研究者がAgroBox No.2の「結晶化条件最適化」に進める適切な結晶化条件を選び出します。
AgroBox No.1 サービス内容
基本Box(480条件)【1box単位必要】
結晶化ロボット(Mosquito)を用いて、結晶化実績が高い基本Boxの5キット(Table参照)による計480条件の結晶化スクリーニングを行います。その後、経時的な結晶観察を実施し、良好な結晶を当社研究者が判定します。最終的にそれら結晶は、ループ法または放射光施設にてプレートに直接X線を照射するin situプレート測定法を用いて、最大25条件の結晶品質チェックを行います。
追加Box A, B, C (各480条件以上追加) 【0.5 box単位必要】
基本Boxに加えて、追加Box 1つにつき480~576条件の結晶化スクリーニングを追加することができます。結晶化の温度を4℃に変えることもできます。追加Box 1つにつきループ法またはin situ測定法にて最大25条件の結晶品質チェックを行います。
ご用意いただくもの:
・タンパク質溶液(5 mg/ml以上推奨)各Box 125 μL 必要
納品物:
・レポート
結晶観察の結果:生成した結晶の写真データ、詳細な結晶化条件
結晶品質チェック:X線回折写真およびオリジナルデータ