AgroBox® Pro FBDD

フラグメント化合物スクリーニング
フラグメントスクリーニングは、新規のリード化合物創出や、新規の化合物結合サイト発見に威力を発揮する方法です。 この手法では、分子質量100~300 Da程度の低分子化合物(フラグメント分子)をタンパク質結晶にソーキングした後にX線回折測定することで、標的タンパク質とフラグメント分子との複合体結晶構造解析を行います。
※本Boxをご利用希望のお客様は、本実験に適した結晶をお持ちかの事前確認と個別のお見積りが必要になります。

第一弾として、LIFE CHEMICALS 社 Pre-plated High-solubility Fragment Diversity Setに含まれる320化合物がご利用いただけます。
1. FBDD (Fragment-Based Drug Design/Discovery)
フラグメントベース創薬(FBDD)は、100~300 Da付近という一般の薬剤よりも小さい化合物(フラグメント分子)を創薬の出発化合物として使い、そこから合成展開することで、効率的に新規かつ高アフィニティーのリード化合物を創出する戦略です。この手法は、タンパク質の立体構造情報をもとにした創薬手法(構造ベース創薬/Structure -Based Drug Design:SBDD)と組み合わせると威力を発揮します。
通常のSBDDでは、ハイスループットスクリーニング(生化学アッセイなど)やドッキング・シミュレーションなどのスクリーニングでヒット化合物が発見され、その後にヒットバリデーション(精密な生化学アッセイなど)で確実な活性が確認されたのちに、ヒット化合物-タンパク質の複合体構造の解析を行うことが一般的です。一方FBDDの考え方をもとにしたSBDDでは、活性不明なフラグメント分子を数百種類、最初から標的タンパク質結晶に添加(ソーキング)し、複合体構造解析を行います。フラグメント分子は、分子量が小さいため、弱いアフィニティーでポケットの特定部位に特異的に結合しやすいという性質があります。高濃度の低分子化合物のソーキングで、この弱く結合するフラグメント分子を複数見つけることができれば、そこから効率的に合成展開(化合物の拡張・結合・最適化)が可能です。
フラグメント化合物スクリーニングには、タンパク質上の未知の結合部位を発見できる可能性もあります。フラグメント分子のセットは、既知のポケット以外にも結合する可能性があり、実際に新規な結合サイトが発見された例も多々あります。
以上のように、「結合するフラグメント分子の発見」と「新規ポケットの発見」の二つを同時に行うことが可能な点がフラグメントスクリーニングの強みと言えます。
2. フラグメントスクリーニングに適した結晶
当社では、FBDD用に低分子フラグメントのライブラリ(第一弾 LIFE CHEMICALS社販売のフラグメントスクリーニングセット:320化合物、平均分子量約200)をご用意しています。各フラグメント分子と標的タンパク質との複合体結晶は基本的にソーキング法で調製します(※お客様ご提供のライブラリでも実施可能)。この作業には結晶を数多く使用しますので、高い再現性で標的タンパク質の結晶が得られる条件の結晶化条件が決定されている必要があります。また、電子密度から低分子の結合を確認するためには2.5Å分解能よりも高分解能の結晶であることが望ましいです。これより分解能が低い場合は結合力の弱いフラグメント分子配向の正確な決定が難しくなり、リード設計の情報が不足する可能性があります。高分解能の結晶が安定して得られる条件が未確定の場合は、AgroBox® No.2 (結晶化条件最適化)をご利用いただけます。
また、フラグメント分子のソーキング前の作業として、結晶のDMSO (ジメチルスルホキシド)耐性を確認します。当社で用いるフラグメント分子ライブラリは、DMSOに溶解させているため、ソーキング及びクライオプロテクタント溶液にはDMSOが含まれます。一般的に5-10%程度のDMSOは許容されますが、結晶化溶液の組成からのわずかな変化で崩れてしまう弱い結晶もあります。本Boxでは、結晶化溶液に対して最終濃度5%のDMSOを加えた溶液に標的タンパク質結晶を移し、結晶の外見の変化や分解能低下がないかを調べます。
なお、リガンド結合状態のみで結晶が得られる場合は、リガンド添加状態で結晶を作成し、そこにフラグメント化合物を添加することになります。この場合は、当該リガンドを伸長させたい場合のヒントとして活用するなどが想定されます。
3. 実験作業
3.1 結晶の調製とソーキング
お客様提供の標的タンパク質と結晶化溶液を使用して、96ウェルプレートに結晶を調製します。結晶への化合物の添加は、結晶ドロップに高濃度のフラグメント分子溶液を添加するか、フラグメント化合物を含むソーキング溶液に結晶を移動させて数分から1時間程度静置することで行います。その後、ループで結晶を回収して液体窒素で凍結保存します。その際、必要に応じて抗凍結剤を用います。
3.2 X線回折データ自動測定および自動データ処理
凍結した結晶は、放射光施設においてX線結晶回折実験に供します。原則として自動モードで測定を行い、得られた回折強度データは放射光施設の自動データ処理ソフトウェアによって処理します。当社による、分子置換法での構造決定やフラグメント分子の電子密度確認が不要な場合は、回折画像と自動処理済みデータのみを納品します。
3.3 電子密度の確認
次にお客様よりご提供いただいた立体構造情報を用い、位相決定とモデリングを行います。まず、分子置換法による位相決定を行い、その妥当性を当社の構造生物学研究者が専門的な知見に基づき判断します。その後、あらかじめ想定される化合物結合サイトだけでなく、標的タンパク質全体を網羅的に観察し、フラグメント分子由来の電子密度が存在するか確認します。電子密度が発見された場合、マップ画像を添付した報告書とフラグメント分子を当てはめた立体構造モデルを作成して納品します。320化合物に対して結晶ソーキング、データ収集、電子密度確認にかかる期間は3~5ヶ月程度です。 このような数百化合物の電子密度を同定する作業は、多大な時間と労力を必要とします。当社にご依頼いただければ、専門知識を持つ構造生物学研究者がこの煩雑な作業を効率的に行い、お客様の負担を大幅に軽減いたします。
AgroBox® Proフラグメントスクリーニングサービス内容
ご用意いただくもの
・タンパク質溶液(結晶化に使用する濃度)
※ 高い再現性で結晶化可能な試料であること
※ 結晶が2.5 Å分解能以上の回折分解能を有すること
フラグメント分子96種類あたり: 50 µL(0.5 mg)以上
・上記タンパク質用の結晶化溶液: 20 mL以上
【フラグメント分子の電子密度確認を当社に依頼される場合】
・上記タンパク質のアミノ酸配列情報
・上記タンパク質の三次元立体構造情報(PDB形式)
納品物
・使用したフラグメント分子リスト(sdf形式)
・結晶準備から自動データ処理までの報告書
・構造因子データ(mtz形式)
・回折データ処理のログなど全ファイル
【電子密度確認をご依頼の場合の追加納品】
・電子密度確認の報告書
・立体構造モデル(PDB形式)
・位相情報付き構造因子データ(mtz形式)

